介護者の「看取り」準備:後悔しない最期のために知っておくべきこと
介護の最終段階として、多くの介護者が向き合うのが「看取り」です。要介護者の状態が日々変化し、いよいよ最期の時が近づいてくるこの時期は、本人も家族も精神的に大きな負担を感じやすいものです。私自身も、母の介護の終盤には、看取りについて深く考え、後悔しない選択をするために様々な準備をしました。
この記事では、介護者が「看取り」に向けて知っておくべき心構えと具体的な準備、そして後悔しない最期を迎えるために大切なことについて、私の経験を交えながら詳しく解説します。
1. 「看取り」とは?介護者の心構え
「看取り」とは、治癒が期待できない病状の進行によって、余命が限られていると判断された方に対し、医療的な処置よりも、身体的苦痛の緩和や精神的なケアを中心に、本人が安らかに最期を迎えられるよう支援し、旅立ちを見届けることです。
- 本人の意思を尊重する: 最も大切なのは、要介護者本人がどのような最期を望んでいるのか、という意思を尊重することです。元気なうち、あるいは判断能力があるうちに、話し合っておくことが重要です。
- 後悔しないための選択: 延命治療の選択、看取りの場所など、重要な決断を迫られます。後悔しないためには、事前に情報を集め、家族間で話し合い、納得した上で決断することが重要です。
- 介護者の心の準備: 看取りは、介護者自身の悲しみや葛藤と向き合う時間でもあります。心身の負担が大きくなることを理解し、周囲のサポートを求める勇気が必要です。
2. 後悔しない最期のための「事前準備」:具体的な段取り
看取りに向けて、以下の具体的な準備を進めておくことで、いざという時に慌てず、冷静に対応できます。
- ① 本人の「人生会議(ACP)」を進める:
- 内容: 「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」とも呼ばれ、もしもの時に備えて、自分らしい生き方や医療・ケアについて、本人、家族、医療・介護従事者と繰り返し話し合い、共有するプロセスです。
- 具体的な項目:
- どこで最期を迎えたいか(自宅、病院、施設)
- 延命治療の希望の有無(胃ろう、人工呼吸器、心肺蘇生など)
- 痛みの緩和や苦痛の除去について
- 大切にしたいこと、やりたいこと
- 活用術: かかりつけ医やケアマネージャーに相談し、話し合いの場を設けてもらいましょう。元気なうちから少しずつ話を進めることが大切です。
- 私の経験: 母が元気なうちに、延命治療に対する考えや、最期は自宅で過ごしたいという希望を、遠回しにですが確認していました。この時の母の言葉が、その後の介護方針の大きな指針となりました。
- ② 家族間の話し合いと合意形成:
- 本人の意思を尊重しつつ、家族間で看取りの方針や役割分担について話し合い、可能な限り合意形成をしておきましょう。意見の対立は、介護の終盤に大きなストレスとなります。
- ポイント: 感情的にならず、冷静に話し合うために、ケアマネージャーや医師に同席してもらうのも有効です。
- ③ 看取りの場所を決める:
- 自宅: 住み慣れた環境で家族に見守られながら過ごせる反面、医療体制の確保や家族の負担が大きくなる。訪問診療や訪問看護の体制確認が必要。
- 病院: 急な病状悪化に対応しやすいが、医療行為が中心になりやすい。
- 介護施設: 施設によっては看取りに対応しており、専門スタッフによるケアを受けながら穏やかに過ごせる。
- 活用術: それぞれのメリット・デメリットを家族で話し合い、本人の希望を最優先に決定しましょう。
- ④ 連携体制の構築:
- 主治医、担当ケアマネージャー、訪問看護師、訪問介護員、薬剤師など、医療・介護の多職種チームと密に連携し、情報共有を徹底しましょう。
- 私の工夫: 定期的にカンファレンス(多職種会議)に参加し、母の状況やケアの方針について話し合い、全員が同じ認識を持てるように努めました。
- ⑤ 財産や法律関係の整理(終活):
- エンディングノートの作成、遺言書の有無、銀行口座や保険の情報、葬儀やお墓の希望など、終活の準備も並行して進めておきましょう。これは、残された家族の負担を大きく軽減します。
- 活用術: 詳しくは「介護と終活」の記事(記事30)も参考にしてください。
3. 看取りの時期に介護者ができること、心のケア
看取りの時期は、介護者にとって精神的に非常に辛い時期です。
- 本人の「今」を大切にする:
- 最期まで、その人らしく過ごせるよう、穏やかな環境を整える。
- 話しかけ、触れ合い、耳を傾ける。
- 好きな音楽を聴かせたり、思い出の品を見せたりする。
- 介護者の心のケア:
- 一人で抱え込まない: 家族、友人、ケアマネージャー、カウンセラーなど、信頼できる人に気持ちを打ち明けましょう。
- レスパイトケアの活用: 短時間でもいいので、介護から離れて休息を取る時間も大切です。
- 「これでよかったのか」という後悔をしないために: 事前に十分話し合い、本人の意思を尊重した決断を下したことに自信を持ちましょう。
- グリーフケア: 死別後には、「グリーフケア」(悲嘆のケア)が必要になることもあります。専門機関や自助グループのサポートも検討しましょう。
まとめ
介護における「看取り」は、要介護者にとっても介護者にとっても、人生の大きな節目です。後悔しない最期を迎えるためには、要介護者本人の意思を尊重し、家族で早期に話し合い、医療・介護の専門家と連携しながら具体的な準備を進めることが何よりも重要です。
そして、介護者自身の心身のケアも忘れずに行い、本人も家族も、穏やかな気持ちで最期の時を迎えられるよう、最大限の努力をしていきましょう。