介護者のための「災害対策」:もしもの時に備える具体的準備

地震、台風、豪雨など、日本は自然災害が多い国です。もしもの時に、要介護者がいる家庭では、通常の避難行動が難しい場合が多く、介護者にはより入念な準備が求められます。停電、断水、交通網の寸断など、刻々と変化する状況の中で、要介護者の命と健康を守るためには、事前の備えが何よりも重要です。私自身も、災害時の母の安否や避難方法について深く考え、準備を進めた経験があります。

この記事では、介護者が知っておくべき災害対策の基礎知識、具体的な備蓄品リスト、そして「もしもの時」に要介護者の命を守るための行動計画の立て方について詳しく解説します。

1. 災害時の要介護者を取り巻くリスク

通常の避難行動が困難な要介護者がいる家庭では、災害時に以下のようなリスクが高まります。

  • 避難の遅れ・困難: 自力での移動が難しく、避難所への移動に時間がかかったり、介助が必要だったりする。
  • 医療・介護の中断: 病院や介護施設へのアクセスが途絶え、必要な医療処置や介護サービスが受けられない。
  • 衛生環境の悪化: 断水や停電で、排泄や清潔保持が困難になり、感染症のリスクが高まる。
  • 精神的ストレス: 環境の変化や不安により、認知症の症状が悪化したり、精神的に不安定になったりする。
  • 備蓄品の不足: 介護食、おむつ、薬など、要介護者に特化した備蓄が不足しやすい。
  • 情報不足: 災害情報や支援物資の情報が、要介護者のもとに届きにくい。

2. 「もしもの時」に備える具体的準備:4つの柱

災害対策は、以下の4つの柱を意識して準備を進めましょう。

【柱1:事前準備:備蓄品と情報の整理】

  • ① 優先順位をつけた備蓄品リスト:
    • 最低3日分、可能なら1週間分を目安に備蓄しましょう。
    • 通常の避難袋とは別に、要介護者用の袋を用意するのがおすすめです。
    • 介護用品:
      • おむつ、パッド(多めに)
      • 清拭シート、ウェットティッシュ
      • ドライシャンプー
      • ポータブルトイレ、凝固剤
      • 使い捨て手袋
    • 介護食:
      • レトルトの介護食、栄養補助食品、ゼリー飲料(常温保存可能で、開封後すぐに食べられるもの)
      • とろみ剤(多めに)
      • アレルギー対応食
    • 医薬品:
      • 常備薬(かかりつけ医に相談し、多めに処方してもらう、お薬手帳も忘れずに)
      • 絆創膏、消毒液、包帯などの救急用品
    • その他:
      • 予備の眼鏡、補聴器の電池
      • 毛布、保温シート、カイロ
      • 携帯用簡易照明
      • 家族写真や思い出の品(認知症の方の精神安定に)
  • ② 医療・介護情報の整理:
    • お薬手帳、介護保険証、診察券、健康保険証のコピー
    • かかりつけ医、ケアマネージャー、福祉用具事業所の連絡先
    • 要介護者の既往歴、アレルギー、食事の好み、BPSDの特性、コミュニケーション方法などをまとめたメモ(A4用紙1枚程度に)
    • 活用術: これらの情報を防水ポーチに入れ、すぐに持ち出せる場所に置いておきましょう。
    • 私の工夫: 私も、母の普段の様子や必要な医療情報などをまとめた「介護情報シート」を作成し、避難袋に入れていました。

【柱2:避難場所・経路の確認と行動計画】

  • ① 避難場所の確認:
    • 地域の指定避難所の場所、開設状況、バリアフリー対応、医療支援体制などを確認しましょう。
    • 要介護者がいる場合、在宅避難が可能なのか、二次避難所(福祉避難所など)の確認も重要です。
  • ② 避難経路の確認:
    • 自宅から避難所までの安全な経路を複数確認し、実際に歩いてみる。段差や障害物の有無も確認しましょう。
  • ③ 行動計画の共有:
    • 家族全員で、災害発生時の役割分担(誰が何を準備し、誰が要介護者を介助するかなど)と行動計画を話し合い、共有しておきましょう。
    • 私の工夫: 家族会議で、災害時の役割分担や、緊急時の連絡方法を事前に決めていました。

【柱3:地域との連携と情報共有】

  • ① 近隣住民との協力:
    • 要介護者がいることを近隣住民に伝え、いざという時の協力をお願いしておきましょう。「災害時要援護者登録」など、自治体の制度を活用するのも有効です。
    • 私の経験: 自治会を通じて、母が要介護者であることを近所の方にも伝えていました。これにより、災害時に地域の方々が気にかけてくれる可能性が高まりました。
  • ② 地域の防災訓練への参加:
    • 要介護者と共に防災訓練に参加し、避難経路や避難所の様子を確認する。
  • ③ 災害情報の入手経路の確認:
    • テレビ、ラジオ、スマートフォンの防災アプリ、自治体の防災無線など、複数の情報源を確保しましょう。

【柱4:避難生活中の注意点とケア】

  • ① 体力温存と環境整備:
    • 避難生活では、要介護者の体力が低下しやすいです。無理のない範囲で体を動かし、暖かく清潔な環境を保ちましょう。
    • エコノミークラス症候群予防のために、定期的な水分補給と足首の運動を。
  • ② 精神的ケア:
    • 不安になりがちな要介護者に、優しく声をかけ、安心させるように努めましょう。懐かしい音楽を聴かせたり、写真を見せたりするのも有効です。
  • ③ 感染症対策:
    • 手洗いや口腔ケアを徹底し、感染症の予防に努めましょう。ウェットティッシュやドライシャンプーが役立ちます。

まとめ

介護者がいる家庭にとって、災害対策は命に関わる重要な課題です。普段からの備蓄品の準備、避難場所や経路の確認、家族間の役割分担、そして地域との連携が、もしもの時に要介護者の命を守るための鍵となります。

「まさか」はいつ起こるかわかりません。焦らず、しかし着実に、一つずつ災害への備えを進めていきましょう。

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