介護と仕事の両立を支える企業の取り組み:働き続けられる職場選びのヒント
介護離職は、介護者にとっても企業にとっても大きな損失です。しかし、近年、従業員の介護と仕事の両立を積極的に支援する企業が増えてきました。介護と仕事の両立は、決して個人の努力だけで乗り越えられるものではありません。企業側の理解とサポートが不可欠です。この記事では、働きながら介護を続けるために知っておきたい企業の取り組みと、介護に理解のある職場を見つけるためのヒントを、私の経験も踏まえてご紹介します。
1. なぜ企業が介護離職防止に取り組むのか?
企業が従業員の介護と仕事の両立支援に力を入れるのには、明確な理由があります。
- 人材流出の防止: 介護を理由に優秀な人材が離職することは、企業にとって大きな損失です。
- 企業イメージの向上: 従業員を大切にする企業として、社会的な評価が高まります。
- 生産性の維持・向上: 従業員が安心して働ける環境を整えることで、仕事への集中力やモチベーションが向上します。
- 法定の義務: 育児介護休業法により、企業は介護休業や介護休暇などの制度を設ける義務があります。
2. 働き続けられる職場の具体的な取り組み例
介護と仕事の両立を支援する企業では、以下のような取り組みが見られます。
- 法定以上の介護支援制度:
- 介護休業: 法定(家族1人につき通算93日、3回まで)以上の期間を認める。
- 介護休暇: 法定(年5日/10日)以上の休暇を認める、時間単位だけでなく半日単位での取得を可能にする。
- 短時間勤務制度: 法定以上の期間や適用範囲を設ける。
- 実例: 私の職場では、介護休暇を時間単位で取得できたことが、母の急な通院や体調不良に対応する上で非常に役立ちました。これにより、いちいち半日休を取る必要がなくなり、業務への影響も最小限に抑えられました。
- 柔軟な働き方制度:
- フレックスタイム制度: コアタイムをなくすなど、より柔軟な勤務時間を設定できる。
- テレワーク(リモートワーク): 自宅での勤務を認めることで、介護と仕事の時間を調整しやすくする。
- サテライトオフィス: 介護者の自宅近くにサテライトオフィスを設置する。
- 実例: 週に数回のリモートワークが認められていたため、母の介護状況に合わせて柔軟に働くことができました。移動時間がなくなり、その分を介護や休憩に充てられました。
- 相談窓口・情報提供:
- 社内相談窓口: 介護に関する相談ができる専門窓口や担当者を設置する。
- 情報提供: 介護保険制度や利用できるサービス、補助金などに関する情報を社内イントラネットなどで提供する。
- 介護セミナーの開催: 介護の基礎知識や制度に関するセミナーを定期的に開催する。
- 実例: 社内報で介護に関する情報が定期的に発信されており、一人で悩まずに済んだ経験があります。
- 両立支援の企業風土:
- 上司や同僚の理解と協力、介護に関するハラスメント対策などが整備されている。
- 介護と仕事を両立している従業員へのロールモデル提供。
3. 介護に理解のある職場を見つけるためのヒント
これから転職を考えている方や、現在の職場で介護支援を求める方は、以下の点をチェックしましょう。
- 就業規則・福利厚生の確認: 企業の採用情報や就業規則、福利厚生制度の項目で、介護休業、介護休暇、短時間勤務、テレワークなどの制度が明記されているかを確認しましょう。
- 企業のウェブサイト・IR情報: 企業のCSR(企業の社会的責任)やサステナビリティに関するページで、従業員支援やダイバーシティ&インクルージョンに関する記述を確認しましょう。
- 企業の口コミサイト: 実際に働いている従業員の口コミで、介護との両立に関する情報や、職場の雰囲気を探るのも有効です。
- 面接時の質問: 転職活動の場合、面接の際に、具体的な介護支援制度の利用状況や、介護に関する職場の理解度について質問してみるのも良いでしょう。ただし、聞き方には配慮が必要です。
- 人事担当者や上司との事前相談: 現在の職場であれば、介護が必要になる前から、人事担当者や直属の上司に自身の状況を伝え、利用できる制度や今後の働き方について相談しておきましょう。
まとめ
介護と仕事の両立は、介護者個人の問題ではなく、企業全体で取り組むべき課題です。介護休業や柔軟な働き方、相談窓口の設置など、従業員を支える企業の取り組みは、介護離職を防ぎ、働き続けられる職場環境を作るために不可欠です。
介護者自身も、利用できる制度を積極的に確認し、職場と良好なコミュニケーションを築くことで、無理なく仕事と介護を両立し、自分らしいキャリアを諦めないでいきましょう。